18年が過ぎた今…

 

二人は巡り会う運命だった?!

いわゆる″じゃぱゆき″(今はあまり使われなくなった言葉だが)として、日本にフィリピンパブ嬢の出稼ぎに来ていた一人のフィリピーナとの出会いが、二人の始まりだった。

 

出会ってからしばらくして、

なぜか彼女は私のことを、

「アサワコ~」と呼ぶようになった。

 

 

フィリピーナ特有の大きな瞳がカワイイ、

ロングヘアーの似合う彼女のことは、初めは特別な感情もなかった。

 

しかし、

毎日のように「アサワコ~♪」と彼女から呼ばれているうちに、少しずつ、彼女のことが気になりだし、気がつけば好きになっていた…。

 

 

タレントはお店との6ヶ月の契約で来日する。契約が終了しフィリピンに帰国後も、

同じく6ヶ月が過ぎないと再来日ができない。

 

 

彼女もお店との契約期間の6ヶ月が終わり、フィリピンに帰国。

もう、これで彼女に再会する可能性は、

お店からのリクエスト以外あり得ない。

 

売り上げNo.1、No.2とかのタレントでなかったから、その可能性は少ない。

 

 

もう、会うこともないのか…

 

 

そう諦めかけていた時に、同じ県内のお店に来たという、彼女からの電話。

 

 

 

運命の神は、

再び二人を引き合わせてくれた!!

 

そして半年後…

 

彼女の帰国直前にプロポーズした。

 

 

彼女の涙…

彼女は、私との結婚を決意してくれた。

 

帰国した彼女の後を追うようにフィリピンへ。

 

ご両親への挨拶を済まし、

数ヶ月後、現地で結婚手続き。

日本の役所にも書類を提出し、あとは日本人の配偶者としてのビザが許可されるのを待つだけ。

 

数ヶ月後、ビザが許可され、彼女を迎えに再びフィリピンへ。

 

 

いよいよ日本へ二人で入国する日の朝、

住み慣れたフィリピンの我が家、

ご両親、

兄弟姉妹

との別れに、彼女は大粒の涙を流し、大泣きしたのだった…。

 

その涙を見て、

彼女を大事に守っていかなければ…

そう心に誓った。

 

 

いつも一人でフィリピンを往復していたのが、

彼女と二人での日本入国。

結婚できた喜びとともに、これからの生活への期待感と少しの不安を思ったあの日…。

 

 

 

 

あれから18年が過ぎた。

 

 

決して順風満帆な結婚生活ではなかった。

 

あまりにも色々な出来事がありすぎ、

波乱万丈だったと言える。

 

 

いつしか、彼女がいるのは当たり前のようにさえ感じていた。

決して、ぞんざいな態度を彼女に対し取っていたつもりはない。

 

18年の年月は、いつしか二人の間の空気さえも変えてしまったのだろうか?!

 

 

 

今、

私の隣に彼女はいない…。

 

だが、それは巷でよく聞く離婚の為の別居とか、そんな類いではない。

 

 

ここで言うには、まだ時間がほしい。

いずれ、全てをお話し出来ると思います。

 

 

今、ハッキリと言えることは、

彼女を愛している心は、変わっていない!!

タレントはラーメンが大好き?

 

再会した彼女は…

ミキがフィリピンに帰国してから、

六ヶ月が過ぎた頃。

 

 

ある日の夕方少し前、突然携帯が鳴った。

画面には、知らない番号が表示されていた。

 

怪訝そうに電話に出ると、

 

「モシモシ~♪アサワコ~…アコ、もうニホンにいるヨ~」

 

ミキからの、日本到着のお知らせだった。

 

それにしても、名字を呼ぶのでなく、

アサワコ~である。

 

 

お客さんとして繋ぎ止める作戦だとわかっているつもり…。

が、アサワコ~と呼ばれると嬉しくなってしまう自分がいた。

 

 

後日、詳しく聞くと…今度のお店は、

同じ県内だが少し山間部の市にあるらしい。

 

店名と場所を聞き、来店する日を約束。

 

 

 

 

そして、当日…。

 

 

お店に着くと、

 

髪をロングからショートヘアーにし、雰囲気は少し変わったものの、紛れもないミキが待っていた…。

彼女は、満面の笑顔で出迎えてくれた。

 

 

帰国中に電話でコンタクトは取っていたが、

やはり、会って話をするほうが嬉しい。

久し振りの再会に1時間では足らず、

延長して2時間を費やし、ミキと話し込んでしまった。

 

 

 

これからは、ミキの「お客さん」となり、お店に通わねばならない…

 

そんな事は深くは考えず、ただ再会できたことが素直に嬉しかった。

 

日曜日は同伴の日!

その頃、

実は勤めていたフィリピンパブを辞めて、

違うお店に移っていた。

 

日本人の女の子のお店で、日曜日は店休。

 

 

それを知ったミキは、

同伴をお願いするようになった。

 

 

夕方4時半くらいに、

彼女達のアパートの近くで待ち合わせし、

午後8時までに入店する。

 

3時間余りの擬似デートだ。

 

 

買い物したり、食事したりでアッという間に時間は過ぎていく。

 

「何が食べたいの?!」

と聞くと、

「ラーメンがいい!みそラーメン!!」

と答えるミキ。

 

 

「またラーメン?

この前の同伴でもラーメンだったけど?」

 

 

心の中ではそう思いながらも、

決して口に出して言葉にはできない。

 

彼女に限らず、フィリピンパブのタレントの女の子はラーメンが好きなようだ。

 

 

ミキのお気に入りは、味噌ラーメン。

味噌、醤油、塩と試し、豚骨は油でパス。

その結果、味噌が一番美味しい!と。

 

 

 

 

時には焼き肉を食べにも行ったが、

同伴といえば、

ほとんどラーメンばかり食べていた記憶が残っている。

 

 

 

 

彼女のいないお店は…

 

写真の中のミキ

ミキたちがフィリピンに帰ったという現実は、なかなか信じられなかった。

 

夕方になれば、

タレント仲間のフィリピーナと楽しくお喋りしながら、

「オハヨウゴザイマ~ス」

と言ってお店に出勤してくるのではないか…

 

そんな感覚に襲われていた。

 

 

だが、それは自分の妄想であり、

ミキのいない悲しみから逃げたい気持ちだったのかもしれない…。

 

 

もう彼女はフィリピンに帰ったんだ、

そう諦めるしかなかった。

 

その日の営業終了後も、

いつものようにタレントのアパートチェックに行ったが、もぬけの殻となったミキたちが寝ていた部屋を見て、寂しさがまた込み上げてきた。

 

 

と!?

 

 

部屋から出ようとドアノブに手を伸ばすと、

一枚の写真がドアに貼ったままになっているのに気がついた。

 

 

「…ミキ!!」

 

 

それは、仲のいいタレント仲間とミキが二人で写っている写真だった!

 

主のいなくなった部屋に、このまま写真を貼っておいても可哀想だ…

そう思い写真を剥がした。

 

 

「もしかしたら、

わざと写真を残してくれたのかもしれない…」

 

そんな都合のいい、

勝手な想いを胸に抱きながらも、写真を見つめた…。

 

そして、日本へ

ミキがフィリピンに帰る前、

教えてくれた自宅の電話番号に初めて電話した時、

彼女は、こちらが誰だかわからなかったようだ。

 

 

それだけの存在だったといえば、それまでなのだが…。

 

 

フィリピンパブのスタッフとタレント。

 

ミキには好きなお客さんもいたから、

当然の反応だろう。

 

 

それでも、

何度も電話をするうちに、

以前より親密になっていくのを感じた。

 

 

 

「アコ(私、のこと)、また日本イクヨ!」

ある時、ミキは嬉しそうに言った。

 

こちらは、

彼女に会える喜びで嬉しくなったが、

 

ミキは、また日本でお金を稼げることの嬉しさだっただろう。

 

 

だが、

 

そんな事は薄々感じながらも、

また同じ県内に六ヶ月間働きに来るという、

「奇跡」

に感謝せずにはいられなかった。

 

 

 

彼女に会えるのだから、それでいい!!

 

 

そして、

 

それから程無くして、

日本に着いたミキから電話が掛かってきた…。

 

 

 

 

しばしの別れ…

タレントとしての宿命

当時、ミキはスタッフの一人としてしか、自分のことを見てなかったと思う。

 

実際、彼女にはリクエストするお客さんもいたし、

日曜日には同伴出勤もしていた。

 

 

こちらに対し、毎日のように

「アサワコ~♡」

などと甘えて呼んでいても、それはそれ。

 

 

恋愛感情は全くなく、

彼女にしてみればフィリピーナお得意のジョークに過ぎず、

こちらの一方的な思いなど、迷惑でしかなかったに違いない…。

 

 

それでも、

「アサワコ~♡」

と彼女に呼ばれるのをいいことに、

彼女への、好きという気持ちは日増しに強くなっていくばかりだ。

 

ミキと毎日話しをするようになり、

アパートチェックの時も、彼女のいる部屋に入り浸ることが多くなっていた…。

 

 

 

疑似恋愛とわかってるつもりでも、

彼女との距離が近くなるのを感じ、そんな毎日が楽しかった。

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

ミキとの別れの日がやって来る…。

 

お店との契約期間の、6ヶ月の満了日が近づいてきたのである!

 

フィリピンパブの女の子は、

6ヶ月間お店で仕事をしたら、いったんフィリピンへ帰らねばならない。

そして、

6ヶ月経つと、また日本へ来る。

 

基本的にその繰り返しだ。

 

リクエストがあれば同じお店で働けるが、なければ違うお店に行くことになる。

 

 

 

こればかりは、タレントの宿命としか言いようがない…。

 

サヨナラパーティー、そして彼女はフィリピンへ…

その日は、ミキの他にも契約満了の女の子が何人かいた。

 

 

”サヨナラパーティー”と称した、彼女たちの6ヶ月間の最後の日。

 

店内はバルーンや花で賑やかに飾り付けられ、いつもと違う雰囲気。

オードブル、豪華なフルーツの盛り合わせが、パーティーチケットを買ったお客さんに振舞われる。

 

 

今日でお別れの女の子は、

普段よりも少し豪華なドレスを身につけ、目一杯オシャレして最後の仕事につく。

 

 

 

お店にとって、サヨナラパーティーは稼ぎ時。

 

そのため、1ヶ月くらい前からパーティーチケットをお客さんに買ってもらうため、

タレントの女の子は勿論、自分たちスタッフも当日までチケットの売り込みに神経をすり減らす…。

 

 

 

この6ヶ月間、楽しいこと、辛いこと、いろいろあっただろう…。

 

指名が取れず、社長から怒られたこと、

嫌なお客さんにも我慢してテーブルについたこと、

本命のお客さんとの楽しい思い出…

 

 

 

だが、それも今夜まで。

 

お店が終われば、彼女たちはプロモーターに連れられて成田空港に直行し、

家族の待つフィリピンへ向かう。

 

半年振りのフィリピンへ想いを馳せているのか、パーティーの主役の女の子は自然と笑顔がこぼれる…。

 

 

 

いつも以上に忙しい時間が過ぎ、閉店時間の少し前になり、

今日でサヨナラの女の子たちが、

 

山口百恵 ″さよならの向こう側″

をバックミュージックに、ステージに立って一人一人挨拶をする…。

 

 

6ヶ月も一緒にいると、感情移入してしまい、

それぞれの女の子が家族みたいに思えてきて、明日からいないのが寂しくなる。

 

嬉しさと、他のタレントと別れる寂しさで、泣いている子の姿も。

 

 

 

ステージの上のミキの姿を、

ホールの隅から見つめ、涙が出そうになるのを自分は必死でこらえている…。

 

 

 

 

果たして、彼女に再び会える日は来るのか?!

 

 

数時間後、

ミキをはじめとする女の子たちは、機上の人となり、待ち焦がれたフィリピンへ帰っていった…。

 

執筆者プロフィール
松田ミキオ (まつだ みきお)
フィリピンに全く興味が無かった男が、まるで運命に導かれるようにフィリピーナに恋をして、31歳で国際結婚。周囲の好奇の目をよそに、結婚歴18年が経過中。詳しいプロフィールはこちら
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