スタッフにはなったが…
水商売の世界に足を踏み入れ、フィリピンパブの厨房スタッフとして働き始めたものの、すでにフィリピーナが大好きという訳ではなかった。
確かに、彼女たちはいつも陽気で明るく、気さくだ。
お客さんへの対応を見ていると、よくしゃべり、よく笑い、表情が豊か。
そして、
「お客さん、ナニカ問題アル?! ワタシも問題イッパイアルよ…
ダケド、お店来たら楽しまないとソン! 今だけ問題ワスレル! ネッ?!」
こんな感じの心遣いも決して忘れない…。
そして、スキンシップのためか、お客さんを自分の虜にするためか、どちらなのか真意はわからぬが、いとも自然に体を密着してきたり、手を握ってきたりするのが得意だ。
とにかく、サービス精神が旺盛なのは確かだ。
お客さんがお手洗いに立てば、おしぼりを持ってお手洗いの出口で待っていたり、
テーブルではグラスの底を拭いたり、
カラオケの時はマイクを渡したり、水商売では当たり前の事を嫌々でなく、
むしろ楽しそうにこなしているようにさえ見える。
やっぱりフィリピーナ
もちろん仕事だから楽しいことばかりではない。
酔っぱらったお客さんに絡まれたり、無理やりキスされたとか、体をイヤらしく触られたとか、いろいろな嫌なことだって勿論あったりする。
お店の売り上げが悪かったり、本人のリクエストが少なければ、店長や社長から怒られもする。
それでも、彼女たちフィリピーナはいつも陽気で明るく、笑顔を絶やさない。
そんな彼女たちを毎日目の当たりにしているうちに、自分の心の中に変化があった。
日本と違い、南国特有の国民性といえばそれまでだが、底抜けの明るさのフィリピーナに感心すると同時に、
『じゃぱゆき』という出稼ぎの境遇さえも、まるで楽しんでるかのような逞しさにも魅力を感じていった…。
厨房兼ボーイ係をしていたことで、自然とそんな彼女たちと話す機会も増えていき、
フィリピンパブも悪くないな…と思うようになっていた。
そんなフィリピーナの中に、まさか後に結婚して妻になる女の子がいることなど、
この時は想像も出来なかった…。
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