アサワ マハル

 

年増?!のフィリピーナと…

20代後半の頃、

以前から興味のあった水商売の世界に、勇気を出して足を踏み入れた。

 

キャバ嬢やホストなどに代表されるように、華やかなイメージがある一方で、

 

 

 

その筋の方々との付き合いや、

様々なトラフルなど、ダークな面と背中合わせな世界だ。

 

 

水商売に入った最初のお店のオーナーもそんな感じであり、

 

 

 

″やはり、この世界は危険が一杯だ…″

 

そう思ったものである。

 

 

 

だが、

 

 

そのオーナーのお店で働いていた、

年増のフィリピーナと出会った事が、私をフィリピンの魅力の虜にさせることになろうとは…。

 

 

そう、

 

そのお店を辞め、同じ市内にあるフィリピンパブで働き出したのである。

 

 

ピン中の世界へようこそ!!

二十歳の時、

先輩に連れられ初めて入ったフィリピンパブ。 

 

 

 

ファーストタイムの女の子が付き、日本語がほとんど通じなかった為、

 

 

全然面白くない!!

 

 

フィリピンパブはつまらん!

 

 

と、それ以降近付くこともなかった。

 

フィリピンそのものにも、良いイメージが持てなかった…

 

 

そう、好きでなかった…

 

 

 

そんなはずだったのが…

 

 

 

 

 

あまりにも陽気なフィリピーナの存在が、

 

フィリピン嫌いだったはずの私を、

フィリピン好きに変えてしまったのである!

 

 

アコ、イカウ、などの簡単なタガログ語を、お店のタレントの女の子との会話にも使うようになり、

 

 

 

そして、

 

タガログソングのカセットテープやCDを聴くようになったり、

 

お店の近くにある、

フィリピンレストランへも行ったり、

 

 

 

 

すっかりピン中の仲間入り…

 

 

 

この世界にハマったら最後、

 

脱け出すのは不可能に近い…だろう。

 

 

 

夢はフィリピン移住!

働いていたフィリピンパブで知り合ったフィリピーナを好きになり、

 

 

望んでいた彼女との結婚も出来た。

 

 

 

二人で何度もフィリピンへ帰り、

その度に、楽しい思い出がたくさん。

 

 

 

タガログ語の上達はイマイチだが、

カラオケでのタガログソングのレパートリーは増えていった。

 

 

 

 

 

 

将来は、妻と二人でフィリピンに住みたい!!

 

 

 

 

フィリピーナと結婚した日本人男性なら、

誰もが一度はそう思うはず。

 

 

さようならフィリピン?!

 

最近は、

フィリピンに行く日本人が多くなった。

 

 

 

フィリピンへの英語留学がブームになっているのがあるだろう。

 

セブをはじめとした、

フィリピンの島々へ芸能人が行く様子がTVで放送されたり、

 

 

 

 

Twitter、Facebookなどでも、

フィリピンの観光地や食べ物の話で賑わっている。

 

 

 

 

 

それはそれでいいのだろうが、

 

 

 

 

 

「何か、オレの求めているフィリピンとは違うんだよねぇ…」

 

 

というのが、

 

最近の日本人のフィリピンブームに対する、

ワタシの正直な心情である。

 

 

 

 

 

 

妻と二人で、仲良くフィリピンで暮らせるだけで幸せ…

 

 

 

そんな気持ちなので、

 

 

 

もし、

 

 

 

 

もし妻と死に別れることがあったり、

 

妻と完全に縁が切れたりしたら…

 

 

 

 

 

私にとっては、

フィリピンは何の意味もない。

 

 

 

興味を無くすかもしれない。

 

 

 

 

私にとってのフィリピンとは、

好きで結婚した妻そのものであり、

 

 

 

妻の存在そのものが、私にとってフィリピンの全てであるから…。

 

 

 

いよいよ結婚手続き!!

 

二人でマニラの日本大使館へ…

初めてのフィリピン訪問から約4ヶ月後、

 

ついに、

彼女との結婚のために、再びフィリピンに行く日が来た!

 

 

本来なら、初渡比から2ヶ月後には結婚手続きに入る予定だったのだが、

彼女の体調不良のために、延期していたのだった。

 

満を持しての、日本大使館行きである。

 

 

 

フィリピン人と結婚するには、

まずフィリピン国内で結婚する必要がある。

 

そして、

その結婚証明書を日本の役所に届け出て、

初めて日本でも夫婦として認められるのである。

 

 

その第一関門として、

 

『婚姻要件具備証明書』なるものを、

申請、受け取るために、

マニラにある日本大使館へ、

結婚する2人が一緒に訪れなくてはならない!

 

 

フィリピン人、日本人ともに、

 

申請の為に揃える書類がいくつかあり、

その揃えた書類を提出し、

婚姻要件具備証明書を請求する。

 

https://kawaiitsuma.com/kokusaikekkon/kokusaikekkon-4.html

 

 

日本の役所はしっかりしているから、

面倒くさいと思いながらも、書類はキチンと揃うが、

 

フィリピンの役所は仕事が遅いことで有名らしく、妻の方は大変だったようだ。

 

 

また、

在外の日本大使館というと、

態度が横柄だとか、

仕事が遅いとか、

あまり評判のいい噂を耳にしない。

 

マニラの日本大使館も、

応対は機械的な感じだった覚えはあるが、

そんなに悪い印象ではなかった。

 

ご主人と奧さま?!

申請は無事に終わったが、

翌日に発行される証明書を受け取りに、

明日再び大使館へ来なければならない。

 

 

付き添ってくれた彼女の長兄、長姉とともに、

大使館の前を歩いていると、

 

見るからに日本人とおぼしき男性が、

こちらに近づいてくる…。

 

そして、

 

「こんにちは、

ご主人、今日は婚姻証明書の申請ですか?!

奧さまも、暑い中、お疲れ様です!」

 

などと話しかけてくるではないか!

 

 

えっ?!

 

ご主人?!

奧さま?!

 

 

何ともこそばゆい響きの言葉に、

一瞬、

 

誰のこと?!

 

と考えてしまった…。

 

 

結婚するのだから、

ご主人と奧さまに間違いないのだが。

 

 

話しを聞いてみると、

結婚申請の代行サービス業者だという。

 

確かに、

『婚姻要件具備証明書』を、

大使館で受け取った後、彼女の居住地域の役所にも出向いて、結婚申請をしなければならない。

 

そして役所に掲示され、

10日間のうちに他者からの異議申し立てがなければ、晴れて結婚できる。

(これも、120日以内に結婚しなければならない、という決まりがある…)

 

 

代行業者に頼めば、役所に出向く手間が省け、楽ではある。

 

 

周囲を見ると、

大使館で見かけた何組かのカップルが、

やはり代行業者らしき男性から話しかけられていた…。

 

 

 

フィリピンで、日本人相手の商売が成り立っている、という怪しさ。

 

 

マニラ湾から吹きつける熱風、

海面に反射する、南国の眩しい太陽。

そして、

海沿いの道に植えられたヤシの木…。

 

初めて見るマニラの海辺を眺めながら、

ふと、そんなことを感じていた…。

 

 

 

 

フィリピンのご両親に会う!!

 

彼女が信用できない?!

結婚の申し出をOKしてくれた彼女が、

フィリピンへ帰国してから約3ヶ月後…。

 

ご両親に会わずして結婚する訳にはいかないだろう…

 

 

そんな自然な思いから、

結婚の挨拶を兼ねて、彼女のご両親、兄弟姉妹に会うために初めてフィリピンを訪問した。

 

 

 

実はこの時、

 

フィリピンで彼女の家族に会わないことには、結婚していいものかどうか、

まだ判断が、つきかねていた…。

 

 

日本人がフィリピーナに騙される話しは、それこそイヤになるくらい聞いていたし、

結婚の約束をしたフィリピーナを追って渡比したら、現地には夫、子供がいた…

 

そんな話しは日本では有名だ。

 

 

 

だからこそ、

現地に行って自分の目で確かめたい!

という、気持ちが強かった。

 

 

家族に会ってみて、

騙されてるようなら結婚破棄すればいい…

 

 

 

彼女と早く結婚したい!

そう強く思う毎日だったが、

冷静な気持ちは失ってはいなかったようだ。

 

言葉は通じなくても…

そして、いざフィリピンへ!!

 

初めてのフィリピン、

そして、

久し振りに彼女と会える!

 

 

冷静なようでいて、

やはり、どこか舞い上がっていたようだ。

 

マニラ空港では大変な目に遇ったりもしたが、

https://kawaiitsuma.com/philippine/philippine40.html

 

 

無事に彼女と再会することができ、

いよいよ、彼女のご両親と会うことに…。

 

 

 

優しい笑顔のお母さんと、

褐色の肌で、一見すると強面なお父さん…。

 

ご両親は日本語は全くわからず、

こっちもタガログ語は簡単な挨拶、少しの単語しかわからないため、

 

彼女と、

 

タレントとして来日経験がある、

一番上のお姉さんの二人が通訳となっての、

顔合わせとなった。

 

 

 

お父さんは寡黙な雰囲気があり、

こちらのタガログ語の不自由さもあり、

フィリピン滞在中は、

あまり話しかけることはできなかった…。

 

 

それでも、

家族みんなが何かにつけ、

 

タタイ(タガログ語で、お父さんの意味)、

タタイ、

と言って話しかけ、

 

お父さんも楽しそうに話しているのを見て、

皆から慕われている優しい人柄が伝わってきた。

 

 

ご両親には、彼女がうまく話しをしていてくれた為か、

結婚を反対されるとか、そんなこともなく、

 

また、

 

家族ぐるみで、

こちらを騙そうとしている雰囲気、

(どうやってお金を貢がせようか…?!)

というのも感じられなかったので、

 

 

彼女と結婚しても大丈夫だな…

 

そう確信でき、

結婚する最終的な決断ができた。

 

ダメなら結婚しなくてもイイ…

やはり、

現地に行き、結婚相手のご両親、兄弟姉妹、

その子供たちにも会い、

生活ぶりを見ることは大事だ。

 

 

実際に会い、話しをすることで、

言葉は全てわからずとも、

家族の印象や雰囲気から、直感的に危険な匂いのようなものは感じられるはず。

 

 

騙されてるな…

 

 

そう感じたら、

いくら彼女のことが好きで好きで一緒になりたくても、その結婚は諦めたほうがいいかもしれない。

 

 

これからフィリピーナと結婚する方は、

結婚前に必ず現地を訪れ、

彼女のご両親、兄弟姉妹に会うことを忘れないで下さい。

 

 

 

結婚する、しないは、

その後で最終決断すればいいのですから…。

 

 

彼女と結婚の約束

 

 

好きになったら一直線

日本人の男性と女性が結婚する場合は、何年か交際してみて、お互いが

 

”この人となら一生暮らしていける!”

 

と確信が持ててから、結婚に踏み切るのが普通だろう。

それは、フィリピン人同士でも同じだと思う。

 

 

だが自分の場合は、知り合って2年近くになるとはいえ、

ミキがタレントとして働いてるお店に、

毎週日曜日には必ず同伴で顔を出し、2時間いて帰る…

 

そんな繰り返し。

 

 

とても付き合っているとは言えない状況だった。

 

 

 

それでも、

好きになってしまうとは恐ろしいことだ…。

 

 

彼女のフィリピンの家族のこと、

これまでの生い立ちなど、

大事なことを、ほとんど詳しく知らない。

 

 

また、

夫になろうかという、こちらの生い立ちなど、

 

彼女は全くと言っていいほど知らない!

 

 

 

ただ、

『結婚したい!!』

 

 

 

そんな思いが日に日に強くなり、

彼女の6ヶ月の契約期間が終わる1ヶ月くらい前に、

ついに意を決して、結婚を申し込んでしまった!

 

 

 

フィリピーナと結婚する日本人男性は、

こんな感じで、交際期間の短い人が多いらしい…。

 

結婚してもイイヨ!

実は、

ミキは半年後に再来日して働く次のお店が、ほぼ決まっていた。

 

隣県の某市にあり、距離的には少し遠いが、

無理をすれば行けないこともない…。

 

 

次のお店にも来てくれる?

 

彼女にそう言われ、最初は、

 

うん、行くよ…

 

と答えていたが、彼女に会うためとはいえ、

毎週片道100㎞近くを通うなんて、いつまで続けられるかわからない…。

 

 

 

そのうちにお店に行かなくなり、

彼女には永遠に会えなくなってしまうかもしれない!

 

 

そんな不安に襲われ、ミキに結婚を申し込んだのだった…。

 

 

 

彼女はフィリピンの家族の稼ぎ頭だったから、真剣に考えただろう。

両親、お兄さん、お姉さんは、最初は結婚に反対だったらしい…。

 

 

 

彼女も悩んだに違いない。

 

 

それでも後日、

結婚してもイイヨ…と言ってくれた。

 

 

 

今振り返ると、

当時はとにかく彼女と早く結婚したかった。

フィリピンの家族のことは、あまり深く考えていなかった…。

 

 

 

そんな独りよがりな、

身勝手な結婚の申し込みを受け入れてくれた彼女に、

今は感謝してもしきれない。

妻が日本人で私はフィリピン人?!

 

約束していたのか?

今回は、少し違う方向から妻と自分のことについて話します。

 

皆さんは、生まれ変わりって信じますか?

輪廻転生ともいいますが…。

 

 

つまり、

今生きている自分たちには、過去に違う人生を生きていた前世というものがある、ということです。

 

 

例えば、

初めて訪れた土地なのに、妙に懐かしい感じがしたり、

 

昔、同じ景色を見たことがあるような、

不思議な感覚に襲われたりする…、

 

 

そんな経験があるのではないでしょうか?

 

 

それはつまり、

前世で同じ景色を見ていたり、

その場所に住んでいた証拠である…

 

そう私は思います。

 

 

 

そう考えると、

 

結婚相手とも、

前世からの知り合いというか、

結婚の約束をして今生に生まれてきたのではないか?!

 

そう思えてくるのです。

 

 

 

この地球上に、

男と女は星の数ほどいるのに、その中から二人が出会って結婚する…

 

 

これはもう、奇跡だと思いませんか?!

 

何かの因果関係以外に考えられません。

 

 

シナリオは出来ていた…?!

国籍が違う二人が出会い、結婚するのは、

尋常なことではありません。

 

もうこれは、

前世からの繋がりとしか思えないのです…。

 

 

 

私はフィリピンに初訪問した時、

その街並みに、どこか懐かしさのようなものを感じ、心の和みさえ覚えました。

 

何回フィリピンに行っても、

その感覚は変わりません。

 

 

また、

私はフィリピンの食べ物で、ほとんど嫌いなものがありません。

 

あのバロットですら、

私には何ともない、普通のゆで卵…の感覚で難なく食べられましたし、

 

まず日本人がしないであろう、

パレンケ(市場)の屋台で平気で食事をすることも、全く気後れしないのですから…。

 

 

 

もうこれは…

 

 

私の前世は、フィリピン人だったのではないか?!

 

そう思えてくるのです。

 

 

そして、

前世では日本人だった妻が、

日本に帰って来るために、日本人の私と結婚したのではないか…。

 

 

 

ただ前世の記憶がないだけで、

私はそんなシナリオを作り、この世に生まれてきたのではないだろうか…

 

 

 

そう思えてなりません。

 

 

タレントはラーメンが大好き?

 

再会した彼女は…

ミキがフィリピンに帰国してから、

六ヶ月が過ぎた頃。

 

 

ある日の夕方少し前、突然携帯が鳴った。

画面には、知らない番号が表示されていた。

 

怪訝そうに電話に出ると、

 

「モシモシ~♪アサワコ~…アコ、もうニホンにいるヨ~」

 

ミキからの、日本到着のお知らせだった。

 

それにしても、名字を呼ぶのでなく、

アサワコ~である。

 

 

お客さんとして繋ぎ止める作戦だとわかっているつもり…。

が、アサワコ~と呼ばれると嬉しくなってしまう自分がいた。

 

 

後日、詳しく聞くと…今度のお店は、

同じ県内だが少し山間部の市にあるらしい。

 

店名と場所を聞き、来店する日を約束。

 

 

 

 

そして、当日…。

 

 

お店に着くと、

 

髪をロングからショートヘアーにし、雰囲気は少し変わったものの、紛れもないミキが待っていた…。

彼女は、満面の笑顔で出迎えてくれた。

 

 

帰国中に電話でコンタクトは取っていたが、

やはり、会って話をするほうが嬉しい。

久し振りの再会に1時間では足らず、

延長して2時間を費やし、ミキと話し込んでしまった。

 

 

 

これからは、ミキの「お客さん」となり、お店に通わねばならない…

 

そんな事は深くは考えず、ただ再会できたことが素直に嬉しかった。

 

日曜日は同伴の日!

その頃、

実は勤めていたフィリピンパブを辞めて、

違うお店に移っていた。

 

日本人の女の子のお店で、日曜日は店休。

 

 

それを知ったミキは、

同伴をお願いするようになった。

 

 

夕方4時半くらいに、

彼女達のアパートの近くで待ち合わせし、

午後8時までに入店する。

 

3時間余りの擬似デートだ。

 

 

買い物したり、食事したりでアッという間に時間は過ぎていく。

 

「何が食べたいの?!」

と聞くと、

「ラーメンがいい!みそラーメン!!」

と答えるミキ。

 

 

「またラーメン?

この前の同伴でもラーメンだったけど?」

 

 

心の中ではそう思いながらも、

決して口に出して言葉にはできない。

 

彼女に限らず、フィリピンパブのタレントの女の子はラーメンが好きなようだ。

 

 

ミキのお気に入りは、味噌ラーメン。

味噌、醤油、塩と試し、豚骨は油でパス。

その結果、味噌が一番美味しい!と。

 

 

 

 

時には焼き肉を食べにも行ったが、

同伴といえば、

ほとんどラーメンばかり食べていた記憶が残っている。

 

 

 

 

彼女のいないお店は…

 

写真の中のミキ

ミキたちがフィリピンに帰ったという現実は、なかなか信じられなかった。

 

夕方になれば、

タレント仲間のフィリピーナと楽しくお喋りしながら、

「オハヨウゴザイマ~ス」

と言ってお店に出勤してくるのではないか…

 

そんな感覚に襲われていた。

 

 

だが、それは自分の妄想であり、

ミキのいない悲しみから逃げたい気持ちだったのかもしれない…。

 

 

もう彼女はフィリピンに帰ったんだ、

そう諦めるしかなかった。

 

その日の営業終了後も、

いつものようにタレントのアパートチェックに行ったが、もぬけの殻となったミキたちが寝ていた部屋を見て、寂しさがまた込み上げてきた。

 

 

と!?

 

 

部屋から出ようとドアノブに手を伸ばすと、

一枚の写真がドアに貼ったままになっているのに気がついた。

 

 

「…ミキ!!」

 

 

それは、仲のいいタレント仲間とミキが二人で写っている写真だった!

 

主のいなくなった部屋に、このまま写真を貼っておいても可哀想だ…

そう思い写真を剥がした。

 

 

「もしかしたら、

わざと写真を残してくれたのかもしれない…」

 

そんな都合のいい、

勝手な想いを胸に抱きながらも、写真を見つめた…。

 

そして、日本へ

ミキがフィリピンに帰る前、

教えてくれた自宅の電話番号に初めて電話した時、

彼女は、こちらが誰だかわからなかったようだ。

 

 

それだけの存在だったといえば、それまでなのだが…。

 

 

フィリピンパブのスタッフとタレント。

 

ミキには好きなお客さんもいたから、

当然の反応だろう。

 

 

それでも、

何度も電話をするうちに、

以前より親密になっていくのを感じた。

 

 

 

「アコ(私、のこと)、また日本イクヨ!」

ある時、ミキは嬉しそうに言った。

 

こちらは、

彼女に会える喜びで嬉しくなったが、

 

ミキは、また日本でお金を稼げることの嬉しさだっただろう。

 

 

だが、

 

そんな事は薄々感じながらも、

また同じ県内に六ヶ月間働きに来るという、

「奇跡」

に感謝せずにはいられなかった。

 

 

 

彼女に会えるのだから、それでいい!!

 

 

そして、

 

それから程無くして、

日本に着いたミキから電話が掛かってきた…。

 

 

 

 

しばしの別れ…

 

 

タレントとしての宿命

当時、ミキはスタッフの一人としてしか、自分のことを見てなかったと思う。

 

実際、彼女にはリクエストするお客さんもいたし、

日曜日には同伴出勤もしていた。

 

 

こちらに対し、毎日のように

「アサワコ~♡」

などと甘えて呼んでいても、それはそれ。

 

 

恋愛感情は全くなく、

彼女にしてみればフィリピーナお得意のジョークに過ぎず、

こちらの一方的な思いなど、迷惑でしかなかったに違いない…。

 

 

それでも、

「アサワコ~♡」

と彼女に呼ばれるのをいいことに、

彼女への、好きという気持ちは日増しに強くなっていくばかりだ。

 

ミキと毎日話しをするようになり、

アパートチェックの時も、彼女のいる部屋に入り浸ることが多くなっていた…。

 

 

 

疑似恋愛とわかってるつもりでも、

彼女との距離が近くなるのを感じ、そんな毎日が楽しかった。

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

ミキとの別れの日がやって来る…。

 

お店との契約期間の、6ヶ月の満了日が近づいてきたのである!

 

フィリピンパブの女の子は、

6ヶ月間お店で仕事をしたら、いったんフィリピンへ帰らねばならない。

そして、

6ヶ月経つと、また日本へ来る。

 

基本的にその繰り返しだ。

 

リクエストがあれば同じお店で働けるが、なければ違うお店に行くことになる。

 

 

 

こればかりは、タレントの宿命としか言いようがない…。

 

サヨナラパーティー、そして彼女はフィリピンへ…

その日は、ミキの他にも契約満了の女の子が何人かいた。

 

 

”サヨナラパーティー”と称した、彼女たちの6ヶ月間の最後の日。

 

店内はバルーンや花で賑やかに飾り付けられ、いつもと違う雰囲気。

オードブル、豪華なフルーツの盛り合わせが、パーティーチケットを買ったお客さんに振舞われる。

 

 

今日でお別れの女の子は、

普段よりも少し豪華なドレスを身につけ、目一杯オシャレして最後の仕事につく。

 

 

 

お店にとって、サヨナラパーティーは稼ぎ時。

 

そのため、1ヶ月くらい前からパーティーチケットをお客さんに買ってもらうため、

タレントの女の子は勿論、自分たちスタッフも当日までチケットの売り込みに神経をすり減らす…。

 

 

 

この6ヶ月間、楽しいこと、辛いこと、いろいろあっただろう…。

 

指名が取れず、社長から怒られたこと、

嫌なお客さんにも我慢してテーブルについたこと、

本命のお客さんとの楽しい思い出…

 

 

 

だが、それも今夜まで。

 

お店が終われば、彼女たちはプロモーターに連れられて成田空港に直行し、

家族の待つフィリピンへ向かう。

 

半年振りのフィリピンへ想いを馳せているのか、パーティーの主役の女の子は自然と笑顔がこぼれる…。

 

 

 

いつも以上に忙しい時間が過ぎ、閉店時間の少し前になり、

今日でサヨナラの女の子たちが、

 

山口百恵 ″さよならの向こう側″

をバックミュージックに、ステージに立って一人一人挨拶をする…。

 

 

6ヶ月も一緒にいると、感情移入してしまい、

それぞれの女の子が家族みたいに思えてきて、明日からいないのが寂しくなる。

 

嬉しさと、他のタレントと別れる寂しさで、泣いている子の姿も。

 

 

 

ステージの上のミキの姿を、

ホールの隅から見つめ、涙が出そうになるのを自分は必死でこらえている…。

 

 

 

 

果たして、彼女に再び会える日は来るのか?!

 

 

数時間後、

ミキをはじめとする女の子たちは、機上の人となり、待ち焦がれたフィリピンへ帰っていった…。

 

一目惚れではなかった…

 

 

カワイイけど…

いつからか、アサワコ~アサワコ~!と呼ばれるようになり、

それが当たり前にさえ思えるようになり、

彼女のことが気になりだしていた…。

 

 

彼女の源氏名は『ミキ』

 

(自分の名前もミキオなので、今思えば何かの巡り合わせだったのかもしれないが)

 

背が高く(165㎝くらい)、髪は肩よりも長く伸ばし、目が大きくクリクリしていて

愛らしい女の子だ。

 

 

が…

 

 

 

とにかくスレンダー。

 

体重は48㎏くらいしかない。

 

 

自分はどちらかと言えば、ふっくらした女性に魅力を感じていたので、

「細い女の子だなぁ…」

という印象しかなかった…。

 

 

だから、恋愛対象外。

 

ミキは当初は姉妹店の別のお店にいた為、

彼女のことはよくわからなかった、というのもあるが…。

 

 

そんなミキからの、

真意不明ながら毎日のアサワココール…

 

当時まだ22~23歳の、愛らしいフィリピーナの彼女にそう呼ばれ、

悪い気はしない。

 

 

自分もまだ20代後半だったこともあり、

だんだんとその気になってしまった…というのが正直なところだった。

 

好きになってしまった!

当時、

タレントの女の子たちはお店の近くの、

会社が借り上げていたアパートで共同生活をしていた。

 

 

そして自分たちスタッフは、

お店の営業時間が終わった後、朝6時くらいに彼女たちのアパートチェックをする日課になっていたのだが…。

 

 

 

フィリピンパブで仕事をするくらいの男達である。

 

程度の差はあっても、

みなフィリピーナが大好きな”ピン中”に変わりはない。

 

 

スタッフの男達が、

多い時は4~5人でタレントの女の子のところに

「アパートチェック」と称して、毎日なだれ込むのである…。

 

 

 

朝4時まで仕事をしていたフィリピーナ達は、食事をしていたり、

シャワーを浴びていたりと、

束の間の自由なひと時を思い思いに過ごしている。

 

 

そんなところへ我々スタッフが顔を出しても、

彼女たちは笑顔で

 

「Kuya~♡」

 

とか言いながら、嫌な顔一つしないで迎えてくれた。

こういう点は、フィリピーナは凄いなと思う。

 

 

 

一応、タレントの女の子全員の所在を確認した後は、

それぞれがお気に入りの女の子のいる部屋に、長居を決め込むのだった。

 

 

 

自分は、もちろんミキが他の女の子と共同生活する部屋へ…。

 

 

もう立派なピン中?!

スタッフになった当初は、

このアパートチェックが嫌で嫌で仕方なかった。

 

 

が、それも最初だけ。

 

毎日フィリピーナたちと接しているうちに、

彼女たちから話しかけられることも多くなった。

 

自分からも簡単なタガログ語で話しかけたり、冗談を言ったりして

彼女たちとの距離が近くなっていった…。

 

 

 

そうなると、アパートチェックはちょっとしたフィリピンパブ状態。

 

 

お客さんはお金を払ってフィリピーナの彼女たちに会いに来るが、

自分たちスタッフは(仕事の一環としてだが)、

言葉は悪いが、お金を貰って好きなフィリピーナたちと戯れるのである。

 

 

フィリピーナ好きには、何とも言えない至福の時間だろう…。

 

 

 

 

仕事の拘束時間も長く、休日も月2日しかなかったが、

アパートチェックでフィリピーナの彼女たちに癒されていたのかな…

 

と、今は思う。

 

 

 

アサワコと呼ばれ…

コヤって…誰のこと?!

毎日フィリピーナの彼女たちと顔を合わせ、段々言葉を交わすようになると、もっと仲良くなりたい!と思うようになった。

 

 

彼女たちはお店でも、スタッフやお客さんに接する以外はタガログ語を話す。

 

タレント同士の会話はタガログ語なので、何を言っているのかわからない。

だから、彼女たちもそれをいい事に、営業中にお客のテーブルについていない時は、ウエイティングシートに座り、仲間のタレントと雑談となったりする…。

 

 

 

厨房兼ホール係だったので、オーダーがない時はホールにいるのだが、タレントの女の子から

「スミマセ~ン、コヤ~(お兄さ~ん)」と呼ばれても、

 

 

 

コヤって誰のこと???

 

というくらいに、タガログ語の知識は全く無かった。

 

 

これではイケナイ…と思い、簡単な単語から覚えよう、とお店の男性フィリピン人スタッフやタレントの女の子たちからタガログ語を教えてもらったりして、

 

 

ありがとう=サラマット  ちょっと待って=サンダリ  私=アコ  あなた=イカウ  愛してます=マハルキタ

元気=マブーテ  元気じゃない=ヒンディマブーテ  綺麗=マガンダ

暑い=マイーニット  寒い=マギナウ  上手(歌とかが)=マガリン

1、2、3…(数字の数え方)=イサ、ダラワ、タトロ…

 

こんな感じで少しずつ覚えていき、使うようにしていった。

 

 

 

簡単なタガログ語でも、それらを話していくうちに、

「あ、この人は少しタガログ語がわかる?…」

と彼女たちが反応してくれて、それが楽しくてどんどん覚えていった。

 

 

同時に、タレントの女の子たちとの距離も近くなっていった…。

 

 

アサワコ~

そんな彼女たちの中に、背が高くてロングヘアー、目がパッチリしていて、少し控えめにしている女の子がいた。

 

 

初めはお店にいる20数名のタレントの1人くらいにしか見ていなかったが、

リクエストでお客さんの席についている時も、

オーダー注文で彼女に呼ばれることが、他の女の子より多い。

 

そんな彼女のことが少し気のなり始めていたある日、

 

 

同じようにオーダー注文でテーブルに呼ばれ、わかりました、と返事をすると彼女が笑いながら一言、

 

「アサワコ~、オネガイシマス…」

と言うではないか!

 

 

アサワコ=私の夫(妻)  結婚したフィリピーナが自分の夫を呼ぶ時によく使う言葉

 

 

その時は、アサワコの意味はもう知っていたので、お客さんと一緒に冗談で少しからかったのかな…

くらいにしか思わなかった。

 

 

しかし、それ以降、お店の営業時間以外でも、なぜか彼女は自分に対し、

「アサワコ~」と呼ぶようになる…。

 

 

 

 

言葉の力は恐ろしい…。

アサワコ、アサワコと当たり前のように呼ばれていくうちに、少しずつ彼女に気持ちが傾いていった。

執筆者プロフィール
松田ミキオ (まつだ みきお)
フィリピンに全く興味が無かった男が、まるで運命に導かれるようにフィリピーナに恋をして、31歳で国際結婚。周囲の好奇の目をよそに、結婚歴18年が経過したが…詳しいプロフィールはこちら
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