自分も父親になる?!
結婚して日本で生活を始めて3年目のある日。
「アサワ…アコ、まだ生理が来ないヨ…
もしかして、ブンテス(妊娠)カナ?!」
突然、妻がそんなことを言ってきた。
それまでも生理が遅かったことが何度かあったので、
「たぶん、そのうち来るんじゃない?!」
と軽く受け流して返事したのだが、
妻は何となく納得できないようで、また様子が少し変だ。
「最近、気持ち悪いときもあるし、レモンとか酸っぱいのが食べたくて仕方ナイダケド…」
確かに、
彼女は最近、食欲が以前より増えた気がする。
結婚前は体重が48㎏くらいしかなく、
お腹と背中がくっつくんじゃないか?!
そう思えるほどに痩せていたのが、
ここ最近は、ほっぺたもふっくらしてきて、
お腹も少し膨らみ、何となくポッチャリしてきたことは感じてはいたが、
まさか、妊娠?!
「まあ、もう少し待てば来るよ…」
「ソウカナ…」
その時は、彼女も渋々ながら納得したのだったが…。
アコ、ブンテス!!
それから何日か過ぎた日、
「アサワ、コレ見て?!」
そう言いながら彼女が見せたのは、薬局で売っている妊娠チェックシートだった。
「見て?!色が変わってるデバ…?!」
確かに、色がついている…。
「うん…確かに…」
「デバ~?!アコ、ブンテス!!」
もう、妻はすっかりはしゃいでいる。
次の日にチェックしても、確かに色が変わっていて、これは病院で診てもらおう…ということで、自宅から程近いレディースクリニックに行ってみることに。
初めて訪れたレディースクリニックは、
外観は清潔感があり、
待ち合い室も何となく可愛らしい感じで、
子供が遊べるスペースが設けてあった。
お腹の大きな妊婦さんや、
迎えに来た旦那さんや家族と一緒に、赤ちゃんを抱きながら退院していく若いママさんがいたり、新しい命の輝きに包まれていた。
名前を呼ばれ、妻と二人で先生のところへ。
妻は診察台がある間仕切りされた部屋へ、不安そうに入っていく。
初めてのことだけに、緊張も隠せない様子…。
しばらくして妻は出てきて、
先生から話があった。
「おめでとうございます。妊娠してます!」
TVドラマでよく見たりするシーンの、そんな言葉とは少し違ったが、確かに妊娠しているという。
まだ2~3ヶ月ということだが、渡されたエコー検査の写真には、それと思える影が写っていた。
「来年の3月には生まれるでしょう」
ついに、自分も父親になるのか?!
先生の言葉が信じられない気持ちだったが、妻は隣で嬉しそうにしている。
生まれてくる子供の為にも、
そして、妻の為にもしっかりしないと…
そう思わずにはいられなかった。
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