アコがボス‥
「日本人の配偶者」としてビザが下りた彼女を、
フィリピンに迎えに行き、晴れて夫婦として日本入国を果たし、
2人での生活が始まった。
フィリピンにいた時と違い、
料理や洗濯の家事を、彼女はしなければならない。
『アコ、フィリピンではボスだよ』
そう言って憚らない彼女。
結婚手続き等でのフィリピン滞在時、彼女を観察していると、
確かにボスだ。
お母さんの料理の手伝いや洗濯は、近くに住む彼女の姉が来てやっていた。
嬉々として洗濯をするお姉さんの姿に、
働き者だなぁ~
と思うくらいだった。
その間、彼女は何も手伝わない。
あまりの女王さまぶりに、
「イカウ、何もしないの⁈」
と、思わず俺は彼女に聞いてしまったほどだった。
すると、
「イイの。お姉さんにはペラ(お金)あげてるから…」と、彼女。
つまり‥
妻とお姉さんとの間には、『手伝いのお礼としてお姉さんにお金をあげる』という、
雇用関係みたいなものが出来ていた。
手伝いに来るお姉さんは、それで満足しているようだ。
焦げた鶏の手羽先
まだ小学生低学年や年長くらいの、妻の甥っ子、姪っ子には、
『お駄賃』として1ペソ、5ペソをあげる代わりに、
近くのサリサリにジュースやタバコ、お菓子を買いに行かせてもいた。
お釣りをいくらかあげたりもして、
妻と姪っ子たちには、完全に主従関係が出来ていた。
これは何も彼女のワガママというわけでなく、
フィリピンには、
『妹が一家の稼ぎ頭であれば、たとえ兄でも妹の言葉に従う‥』
という言葉があるくらいに、
稼ぎ頭の言葉に従うのが当たり前‥らしい。
※妻の言葉によれば‥
子供のお使いに関しては日本でも同じようなものだが、
フィリピンでは子供にお使いさせる頻度が、日本以上に高いように思える。
確かに、
目の前にいる彼女(妻)は、紛れもなく、
彼女たち家族で一番の稼ぎ頭だ。
一番上のお兄さんでさえ、末っ子の彼女の言葉は無視できない。
…
フィリピンでは、
お兄さんお姉さんでさえも、アゴで使っていた彼女。
そんな彼女が一生懸命に作ってくれた、
黒い焦げ跡がある、鶏の手羽先の唐揚げ。
馴れない料理に悪戦苦闘しながらも、日本に来て初めて彼女が作った夫への料理。
『ここから2人の歩みがスタートするんだ‥』
そう思いながら食べた焦げた手羽先を、
今も時々、懐かしく思い出す。
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